海外にいたから英語が話せるなんて、幻想だ。

海外にいたから英語が話せるなんて、幻想だ。 アイキャッチ

※予め、これはあくまで私個人のケース及び意見であると明言しておきます。

私には不思議なことがあります。
フランスだとかドイツだとかスペインだとか、英語圏以外に住んでいた日本人にお会いしてみると、大抵その土地の言語に加えて英語まで話せるんですよね。

あれは一体どうしてなのでしょう、すごくないですか?
やはり元々語学の素質がおありなのでしょうね。
このブログを読んでいる皆様の周りにも、そういった方はいらっしゃいませんか?

それ故だと思うんです。
私も、ガラパゴス諸島に住んでいましたと言うと
「おっ、ということは“そういう類”の人だな」
と自動的に解釈され、英語ができる要員として扱われてしまいます。
否定しても
「またまたご謙遜を~」
と取り合って頂けず困り果ててしまいます。

勝手にハードルを上げられて勝手にがっかりされるのはとてもつらいので、ここではっきり申し上げます。
残念ながら私の場合は本当に違うんです!

英語を全くといって良いほど使わない世界

私は南米エクアドル、ガラパゴス諸島のチャールズ・ダーウィン研究所というところでボランティアしていました。
エクアドル領なので、ガラパゴス諸島の言語はスペイン語です。

とは申しましても、私はそのスペイン語レベルも「日常生活には困らない」程度のもので、ペラッペラの上級者というレベルでは断じてないと自覚しています。
なにせここに来ることになった背景が背景ですし(以下の記事をご参照ください)。

きっかけ

ガラパゴス諸島で暮らしていると英語を使う場面は全くありません。
買い物も友人との会話も全編スペイン語。

チャールズ・ダーウィン研究所はやたらとインターナショナルボランティアの募集要項で、現地語であるスペイン語に関しては二の次で「英語が話せるか」を条件に入れてくるのですごくびびっていたのですが、実際のところ働いてみて英語を使う場面はほとんどありませんでした。
(あの募集要項はちょっとどうなんだと思います。絶対スペイン語話せない方が困ります。)

だって上司やスタッフは当然エクアドル人が多いですし、外国人スタッフもスペイン語が話せる人がほとんどですから、部署内の会話をはじめ研究所全体での会議に至るまで全編スペイン語です。
(※あくまで私が在籍していた当時は、です)

部署によってはスペイン語が話せない外国人スタッフやボランティアがいらっしゃいますから、そこでは英語で話すのでしょうが…。

というわけで、英語を本当に全然使わなかったんです(元々使えなかったけど)。
元々外国語が好きで英語が得意な方なら別なのでしょうが、私の脳の場合は、容量の都合で使わない外国語は完全に忘却の彼方へ処分されるシステムになっております。

ただ、どうしても英語を強いられる場面がひとつだけありました。

そう、外国人観光客対応

チャールズ・ダーウィン研究所は観光地でもあり、毎日沢山の外国人観光客が訪れます。
もちろん、英語圏からの観光客も…!

研究所内にはゾウガメやリクイグアナの保護飼育場があるため、多くの観光客はそれを見に訪れるのですが、ちょっと看板が不親切で敷地内で迷ってしまう人が多々(最近は看板も改善されたようです)。とろけるゾウガメ

ある日の勤務中、私は敷地内の別の建物の部署で用事を終え、自分のオフィスに戻ろうと歩いていると、進行方向上で地図を片手に立ち止まりキョロキョロと迷っているご夫婦がいらっしゃいました。
二人は何やら英語で会話しています。英語圏の方のようです。

う…どうしよう。

私も外国人観光客のふりをしてスルーするという手も頭によぎったのですが、思いっきりSTAFFと書かれたダーウィン研究所のユニフォームを着ていたことを思い出しました。
しかも、どう頑張ってもこのご夫婦の真横を通らないとオフィスに戻れない状況です。

うぅ…これは…スタッフの義務として、お困りの観光客の方は助けないと!

だから意を決して、私は英語で対応しようとご夫婦のもとへ近寄りました。

私の口から出た英語は…

立ち止まって不安げにキョロキョロしているご夫婦に、私は「もう大丈夫だよ」と慈愛に満ちた優しい笑顔でこう言ったんです。


「Can you help me?」

私は忘れません、この時のご夫婦のポカーンとした、時が止まったような表情を。
ただでさえ困っているそんな時に、謎の外国人が突然現れて「助けてくれ」ってのたまうんですよ。
信じられないですよね。私も信じられません。

皆様お察しの通り、私は
「May I help you?」
と言いたかったんです。

うわ何言ってんだ、と慌てて言い直そうとしたのですが口から出てくるのは
「キャンユー……メイユー……ブフォッ」

大自爆。

私が自滅している間も、ご夫婦はポカンとしたまま私を見つめ一言も発しませんでした。
いたたまれなくなった私はこの場からずらかることを決意し、ユニフォームのSTAFFの文字をさり気なく手で隠しながらご夫婦を置いて立ち去りました。

オフィスに戻ってから英語を話せる同僚に「あそこでお客様が迷ってる」と伝えてすぐに向かってもらいましたが、もう姿はなかったようです。
これ以上ここにいるとまた変な者に絡まれるかもしれないと思ったのでしょう。

あのご夫婦は、私のことを今も通り魔か何かと思っているに違いありません。
その節はご迷惑をお掛けし誠に申し訳ございませんでした。

私は英語はダメだ。とはっきりと自覚した瞬間でした。
頭を外国語モードにすると口から出るのはスペイン語になってしまっていて、それ以前も研究所内で英語圏の観光客に道を聞かれると
「ゴー ストレート アンド ヒレ ア ラ イスキエルダ。メニー トルトゥーガス アイ ゼアー!」
とスペイン語版ルー大柴みたいになっていたので、その時点で自覚して自粛していればこのような事件は起こらなかったのです。

だから、今一度はっきりと申し上げます。
海外にいたからって、私は英語が全然話せません。
私に他の海外経験者のようなスキルをどうか一切期待しないでください。

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ABOUTこの記事をかいた人

ガラパゴスバットフィッシュ愛好家、NPO法人日本ガラパゴスの会スタッフ。著書『バットフィッシュ 世界一のなぞカワくん― ガラパゴスの秘魚』(さくら舎) 。 たまたま本で見たガラパゴスバットフィッシュに大恋愛し、大学在学中に2度ガラパゴス諸島に渡航、バットフィッシュを観察。 卒業後は、ガラパゴス諸島のチャールズ・ダーウィン研究所のボランティアスタッフとして活動。およそ1年半をガラパゴス諸島及びエクアドル本土で生活した。現在、ガラパゴスバットフィッシュやガラパゴス諸島に関する寄稿、トーク、講演、メディア出演等を行っている。