【自然保護】動物が好きだからこそ、植物を守る。

動物が好きだからこそ、植物を守る。 アイキャッチ

「自然保護」「環境保全」という言葉を、人並みかそれ以上に理解していた自覚がありました。
しかし、いざ現場に立って活動して初めて気付けたことがありました。

私はガラパゴス諸島、チャールズ・ダーウィン研究所のプロジェクト・ガラパゴス・ベルデ2050(以下GV2050)に所属していました。

スタッフとして植物の世話をしていると、通りがかった人によく言われることがあります。
「せっかくユニークな動物が多くいるガラパゴス諸島の研究所にいるのに、動物に携わらないなんてもったいない。つまらないでしょう?」

ガラパゴス諸島はゾウガメやイグアナ、フィンチにアオアシカツオドリなどといったステキな動物の宝庫です。
私もそんな動物たちが大好きで、特にガラパゴスバットフィッシュなんて本当たまらんとです。
実際、ガラパゴスバットフィッシュのためにチャールズ・ダーウィン研究所にやって来ましたから、植物部門であるGV2050に所属することになったのは本当に運命のいたずらでございました。

《運命のいたずらの全貌はこちらの記事をどうぞ↓》

気付いたら、ガラパゴス諸島民。

それまで正直、植物に目を向けたことはあまりありませんでした。
ですから、こういった方々の考えも理解できます。
しかし、GV2050に所属して実際に現場に立ってみてから、私の意識は大きく変わりました。

そして、こう返事するようになったんです。
「動物好きだからこそ、植物を守るんです。」

《GV2050の詳しい活動内容についての記事はこちらをご参照ください!》

保全活動に興味がある人に考えてほしい、「植林」という言葉

ガラパゴスの現状で考える

サウス・プラザ島

こちら、ガラパゴス諸島の中央部に位置する無人島、サウス・プラザ島の写真。
太い幹をもつ木に見えるものたち、実は全てサボテンなんです。
固有種、ガラパゴスウチワサボテン。
この島のウチワサボテンがこのように大木化したのは、この島に昔からリクイグアナが数多く存在したためです。

リクイグアナはサボテンの実や花を主食とします。
しかし全て食べ尽くされてしまってはサボテンもたまったものではありません。
背を高くすることでリクイグアナの届かない位置に実や花をつけ、太くて頑丈な幹を持つことで爪の弱いリクイグアナが登ってこられないように進化を遂げたのです。

リクイグアナが多く生息してきた島のサボテンはこのように大木化している傾向があり、リクイグアナたちはサボテンの下で実が落ちてくるのをじーっと待って暮らしています。

サボテンの下のリクイグアナたち

 ↑陰の部分をよーく探してみてください。リクイグアナが数匹いますよ!

そんなサボテン、写真に写っているのは実は生き残った数少ない個体です。
人間の往来の影響で、1983年にこの島に外来種のネズミが上陸し、多くの在来植物の根を食べ尽くしてしまったのです。

全長500mしかない小さな島ですから、ネズミであっても30年もあれば簡単に島全域を食べ尽くすことが可能でした。
現在、サウス・プラザ島からこのネズミは根絶されましたが、既に70%近くのサボテンは枯れ死んでしまっていました。


サボテンの減少は、当然この島に生息するリクイグアナにも打撃を与えました。
残された約30%のサボテンのみでは彼らの十分な食事はまかなえないのです。

さらに、この島から完全に姿を消してしまった動物がいます。
固有種、ガラパゴスノスリです。
彼らは見晴らしの良い大木化したサボテンの上に営巣する習性があり、かつてはこのサウス・プラザ島で多く見られました。

こういった場合、私たち人間が出来ることはふたつあります。
残された数少ない動物を保護し、絶滅を防ぐこと。
その動物の生息地の植生を蘇らせること。

大切なのは「同時進行」

自然保護というと、まず①を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
パンダやオランウータンなど、絶滅危惧種を保護する施設がその例です。
ダーウィン研究所でも、ガラパゴスの様々な絶滅危惧種を保護するチームがあります。

そして、その動物を野生に帰すことが最終目標であるのなら、平行してを実行することがとても大切なのです。

例えばせっかく森林伐採地から保護して育てたパンダを、再び笹の無くなった伐採地に帰したらそのパンダは生き延びられるでしょうか?
肉食動物ならそんなこと関係ないと思うかもしれません。
しかし、その肉食動物が食べる獲物は、何を食べているでしょう?

食物連鎖を遡っていけば、植物に辿り着きます。
不毛の地では昆虫をはじめ小動物も草食動物も生きられず、そしてそれを食べる肉食動物も生きてはいかれないのです。

植生を蘇らせることは動物を守ることに繋がり、生態系全体の保全に繋がります。
GV2050は、この活動を行っているのです。

しかし、相手は鳴きも動きもしない植物。
面白みがないのではと思われる方もいるでしょう。

それがですね!それがでございますよ!
私がGV2050で働いていて一番感動したことは、「短期間で成果が目に見える活動」だということです。

例えば、ガラパゴス諸島で最も不毛の地となってしまったバルトラ島。
活動を重ねるごとに、動物の姿が増えていることが確認できるのです。
この島から姿を消していた固有種のアオメバト(ガラパゴスバト)が、少しずつこの島に戻っています。

アオメバト(ガラパゴスバト)たち

ついに幼鳥の姿を発見した時は、みんなで感動してしまいました。
この島で確実に営巣し、繁殖を行っているという証拠であるからです。

アオメバト(ガラパゴスバト)の幼鳥

ダーウィンクマバチやチョウといった固有種・在来種も、この島に戻ってきています。

ダーウィンクマバチ

そして最初に述べたサウス・プラザ島でも、島の上を旋回するノスリの姿が確認され始めています。
サボテンの成長スピードは遅く、立派な大木に育つまではまだまだ年数がかかりますが、きっと未来にはこの島に戻ってきて再び営巣してくれるはずです。

リクイグアナたちが十分なサボテンの実や花を食べられるようになるまでにも、まだまだ時間がかかるでしょう。
それでも、確実にこの島にサボテンの個体数は増えています。
リクイグアナたちよ、長い目でサボテンが育つのをどうか待っていておくれ。

生態系において、植物と動物は1セット

偉そうにごたいそうなことを綴りましたが、私自身がこの②の必要性に気が付いていなかったのです。
生態系を守る!=①
という発想しかなかったのですね。
ですから、偶然②の現場で働けたことは大きな気付きの機会になりました。

固有・在来植物の生態系における価値はガラパゴスに限らずどの世界でも、もちろん日本でも同じ。
野生生物の保護活動について考えることがあった時、その動物を取り巻く植生の重要性にも目を向けることが当たり前になりますように。


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ABOUTこの記事をかいた人

ガラパゴスバットフィッシュ愛好家、NPO法人日本ガラパゴスの会スタッフ。たまたま本で見たガラパゴスバットフィッシュに大恋愛し、大学在学中に2度ガラパゴス諸島に渡航、バットフィッシュを観察。 卒業後は、ガラパゴス諸島のチャールズ・ダーウィン研究所のボランティアスタッフとして活動。およそ1年半をガラパゴス諸島及びエクアドル本土で生活した。現在、ガラパゴスバットフィッシュやガラパゴス諸島に関する寄稿、トーク、講演を行っている。