挫折

前略 ガラパゴスバットフィッシュ様

以下の記事で申し上げました通り、あなたとガラパゴス諸島への思いと夢だけで、語学が嫌いにも関わらずスぺイン語の学科に入学してしまった私が壁にぶち当たるのはその後すぐのことでした。

きっかけ

まず、同じ学科に入学した人々の目標が違った。

「将来外務省で働きたい」
「大使館で働きたい」
どうしてこの学科に?と尋ねると返ってくるこれらの言葉の数々に、私は恥ずかしくなってしまいました。
皆立派に将来を見据えている中、私はというと
「ガラパゴス諸島に行って、ガラパゴスバットフィッシュに会いたくて
この有様でございます。

皆はとても優しく、素敵な目標だね!と励ましてくれましたが(良い同級生たちに恵まれて本当に良かった)、こんな私がこの中に入ってしまって申し訳ないなと入学初日から感じました。

挫折への階段!スペイン語の授業が始まった!

語学部に入学する人は、基本的に語学が好きでセンスがあるものです。
ですから、学内外で鬼と有名な学科のハイペース及び課題まみれの授業でも、苦労しつつも最終的には授業についていかれる方が多いのです。
一方の私は、あなたで頭がいっぱいお花畑ルンルンで、自分が語学嫌いだということはアウトオブ意識で入学したので、大変なことになってしまいました。

①初っ端から授業に付いていかれない。
②周りが1回で覚えられることが、30回は繰り返さないと覚えられない。
③というかもう、どこがわからないかがわからない。

自分の語学のセンスの無さが露呈し、情けなさに落ち込む日々でした。
それでも、あなたに会うため…という夢だけを希望に、がむしゃらにもがいておりました。

なぜこれに気付かなかったアキコ…挫折の決定打、到来。

しかし1年次の7月。
ふとあることに気が付いてしまったのです。

私がどんなにスペイン語を勉強して仮に話せるようになっても、バットフィッシュはスペイン語しゃべらないじゃん。

スペイン語をしゃべらないガラパゴスバットフィッシュ

あなたはここまで目を通して、「何を当たり前なことを」と呆れていることでしょう。
まさに当たり前なことですし、あなたが人語を話さないであろうことはもちろん潜在的にわかっていたのですが、あえてスポットライトを当ててこなかった明確な事実の衝撃を真正面からくらってしまった私は、大きなショックでひとり泣き崩れてしまいました。

私は、あなたが想像する以上に大馬鹿者なのです。

それからの私は、なんだかもうどうでもよくなってしまっていました。
初めて抱いた大きな夢を手放し、惰性で続ける嫌いな語学は前にも増してボロボロの成績でした。
元々人生の夢なんて持っていなかった人間なのだから、元の姿に戻っただけ。
これでいいのだ、これが通常モードなのだ。
そう自分に言い聞かせ、あなたへの思いはなかったことにして静かに過ごしていました。

五里霧中の状態を晴らしたのは何気ない一言

しかし、やはり覇気というものがなくなった様子はわかる人にはわかるようでした。
およそ1年サイレントモードで過ごしていた私に、母が
「バットフィッシュに会いに行くんでしょう?頑張りなさいよ。」
と突然言い放ったのです。
その言葉にものすごくハッとさせられました。

あなたを初めて本で見た時の衝撃。
あなたのために受験勉強を頑張っていた時期。
合格して、あなたに会いに行くためのスタートラインに立てたと嬉しくて涙を流した時。
全てのことが走馬灯のように思い出されました。

そして、やっぱりどうしてもあなたに会いたくなりました。

あなたはきっとスペイン語を話さないけれど、あなたの居住地に住んでいる人々はスペイン語を話す。
島の人とあなたの話をする時に、スペイン語はきっと役に立つ。

ガラパゴスバットフィッシュ 少しななめからの写真

母の言葉にものすごく背中を押され、私はもう一度奮起することができたのです。
当の本人はそんなこと言ったっけ?と忘れているようですが、私はずっと感謝しています。

そしてやる気と希望に満ちた私は、ほどなくしてスペイン語マスターに…


なれるわけがありません。
再奮起したところで、元々語学センスのない人間が超特急でペラペラになるわけがありません。
相変わらず授業についていくのは大変で、同じ学科の子たちと比べると最底辺のレベルではありましたが、悶えながらもあきらめずに努力を重ねていきました。

話すことはまだまだままならないけど、読み書きはまあ…という程度にはなっていた大学3年の夏休み。
私はついに、あなたに会うために憧れのガラパゴス諸島に行くことに致しました。

前途多難な出発

一ヶ月をガラパゴス諸島で過ごすことに決めた私でしたが、海外に行くのは小さい頃父親の単身赴任先だった中国に行った以来でございまして。
トランジットって何?税関って何?状態。
飛行機に一人で乗るのが初めてだというのに、ガラパゴスまで片道4つの飛行機を乗り継ぐという普通であれば怯む旅程を、あなたへの思いでドーパミン大放出の私は「きっと大丈夫!」と楽観視しておりました。

出発の日、成田空港の保安検査場の金属探知ゲートを腕時計・携帯電話・財布のフル装備でくぐりひっかかった時にやっと「あ、私保安検査のルールさえわかっていないんだ」と気付かされましたが、もう行くしかありませんからね。南無阿弥陀仏。

あなたという存在を知った時からのことをこうして振り返ると、あなたに会いたいがためだけに随分と無茶をしたなと感じます。
しかし、この2013年の夏に初めてガラパゴスに訪れてからの方が、もっとあなたに首ったけになってしまい、沼にはまってゆき…より一層の無茶をしているかもしれません。
この初渡航以降のお話は、また別の機会にいたしましょう。

あなたのお蔭で、私の人生は大きく変わりました。

それが良いのか悪いのかはわかりませんが、とりあえず今私はあなたのお蔭で幸せなのです。


草々

《この記事の続編》

気付いたら、ガラパゴス諸島民。

《ガラパゴスバットフィッシュがどんな魚かはこちら!》

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ABOUTこの記事をかいた人

ガラパゴスバットフィッシュ愛好家、NPO法人日本ガラパゴスの会スタッフ。著書『バットフィッシュ 世界一のなぞカワくん― ガラパゴスの秘魚』(さくら舎) 。 たまたま本で見たガラパゴスバットフィッシュに大恋愛し、大学在学中に2度ガラパゴス諸島に渡航、バットフィッシュを観察。 卒業後は、ガラパゴス諸島のチャールズ・ダーウィン研究所のボランティアスタッフとして活動。およそ1年半をガラパゴス諸島及びエクアドル本土で生活した。現在、ガラパゴスバットフィッシュやガラパゴス諸島に関する寄稿、トーク、講演、メディア出演等を行っている。