ウミイグアナ、最大の敵はエルニーニョ?潜りながらでないと食事できない?

ウミイグアナ、最大の敵はエルニーニョ?潜りながらでないと食事できない? アイキャッチ

ガラパゴス諸島を象徴する生物、ウミイグアナ。
あまりガラパゴスを知らない方でも、「ウミイグアナがいるところだっけ?」と名前を挙げるほどの知名度を誇っています。
ガラパゴスのお土産やさんでもウミイグアナグッズは沢山並んでいて、とても人気です。

彼らは海に潜って食事をするイグアナということは比較的周知されていますが、あまり知られていない部分も沢山。
知っているとちょっと自慢できるかもしれないウミイグアナ情報をお伝えします♪

ウミイグアナの天敵は?

2016年に公開されネット上を騒がせた動画が、ウミイグアナVSヘビ。
孵化したばかりのウミイグアナが大勢のヘビから逃げ惑う、CGさながらの映像が世界を驚かせました。

ヘビは赤ちゃんウミイグアナにとって大きな脅威です。
空からはノスリにも狙われてしまいます。
孵化してからまだ小さい間は、このような脅威がつきまとってしまうのですね。

それではウミイグアナにとって最大の天敵はヘビ、ノスリなのでしょうか?
いいえ、実はもっと恐ろしい最大の脅威が彼らにはあります。

それが、エルニーニョ現象。

数年に一度、貿易風の影響で暖水塊が流れ込み海水温が高くなる現象です。

「海水温が上がるなら、海に入って食事するウミイグアナにとってはより快適になるのでは?」
と思いませんか?
私だって、冷た~い海にダイビングするより、少しでも暖かい海に入る方が体感的にも断然楽です。
ましてやウミイグアナは変温動物ですから、「ねぇ、そこんとこどうなの?」と聞いてみれば、本音では体温が下がりすぎない暖かい海の方が好ましいはず。

ウミイグアナたち

しかしこのエルニーニョが大問題なのは、彼らの食べ物に大打撃を与えるからです。

ウミイグアナは海藻を食べて生きています。
エルニーニョ現象による海水温の上昇で、彼らが好んで食べる海藻(緑藻、紅藻)がダメージを受けてしまうのです。

1980年代に発生した大規模なエルニーニョ現象の際は、それらの海藻がガラパゴスの海でほぼ全滅してしまいました。
そのため、ウミイグアナたちは本来食べることのない暖流系の褐藻を食べざるを得なくなりました。

「なんだ、まだ食べるものあるなら大丈夫じゃん!」
と思ってはいけません…悲劇はここから…


この褐藻がウミイグアナの胃では消化できずボールのように溜まってしまい、食事がとれなくなり死んでしまうのです。

この1980年代の巨大エルニーニョの結果、90%ものウミイグアナが死亡してしまいました。
まさに、彼らにとって巨大な脅威だったのです。

どんなヘビよりノスリより、一気に大勢のウミイグアナを死に至らしめてしまうエルニーニョ現象こそが彼らの最大の天敵なのですね。

潜りながらでないと食事ができない性質なの?

先ほどご説明しました通り、ウミイグアナは海に入って海藻を食べる生き物。
「潜りながらでないと食事できない性質だと海が荒れた時大変よね~」

とつい親のような目線で心配してしまう方が多くいらっしゃいます。

ウミイグアナは海の中でじゃないと食事できないシステムなのでしょうか?

泳ぐウミイグアナ

そんなことございません。
むしろ、できるなら海に入りたくないと思っているはずです。

ウミイグアナの先祖は陸生のイグアナ(グリーンイグアナと言われています)。
元々陸暮らしなのです。
海に入りだしたのは、生きるために仕方なくという彼らのご先祖様方の選択ゆえです。

そりゃあもう、できるならわざわざ苦労したくないに決まってます。
海中だと流れもありますし、息継ぎだってしなければならないですし、そもそも体が冷えますし。

ですから、海に入らなくて済むときには、こちらの映像の通り入らないで食事しますよ!

干潮時には彼らの食べる海藻が露出される場所があります。
このタイミングではむはむと召し上がるウミイグアナも多くいるんですよ。
特にまだ小さいうちは泳ぐのも上手ではないですから、地上で心置きなく食べられる方がいいですものね。

海に入るという生態から何かと苦労が多いウミイグアナ。
この記事を読んでくださった皆様が、ウミイグアナを「恐竜みたいで怖い」と思わずに、「頑張って生きているね。お疲れ様」と労っていただけるようになったら、きっとウミイグアナも嬉しいと思います。

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ABOUTこの記事をかいた人

ガラパゴスバットフィッシュ愛好家、NPO法人日本ガラパゴスの会スタッフ。著書『バットフィッシュ 世界一のなぞカワくん― ガラパゴスの秘魚』(さくら舎) 。 たまたま本で見たガラパゴスバットフィッシュに大恋愛し、大学在学中に2度ガラパゴス諸島に渡航、バットフィッシュを観察。 卒業後は、ガラパゴス諸島のチャールズ・ダーウィン研究所のボランティアスタッフとして活動。およそ1年半をガラパゴス諸島及びエクアドル本土で生活した。現在、ガラパゴスバットフィッシュやガラパゴス諸島に関する寄稿、トーク、講演、メディア出演等を行っている。